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仙台旅行記*2 バンカラ礼賛その1
仙台で図らずも盛り上がったもの、それはバンカラ熱。東北大学が旧制二高であることは知っていたので、時間があれば出かけようという軽い気持ちで見に行った東北大学史料館。予想に反して史料が充実しており、大変面白い場所でした。全体的なレポを書いている暇はないので、ごくかいつまんで要点だけ。

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二高関係の史料の中でも、我々が最も盛り上がったのが、これ。
朴歯(ほおば)と白線帽。嗚呼懐かしの旧制高校、いざ歌わんデカンショを!などと思わず叫びたくなるほど、ベタな旧制高校の遺物を見て感激するワタシ。白線帽には蜂の徽章がついていて、これがとてもかわいい。二校は蜂のマークなのですね。Tさんともども、「この帽子かわいい」「この帽子欲しい」を思わず連発。

いやいやそれより何より、やはり感動的だったのは朴歯でしょう。要するに高下駄なのですが、この朴歯に白線帽そしてマントという出で立ちは旧制高校生の典型的なスタイルとして記憶されています。私も旧制高校関連の書籍(特に北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』)で読んだことはあるけれど、実物を見たのは初めてでした。いやぁ、これか。おそらくカスタム済みであろう無駄に太い鼻緒、歴代の持ち主の名前が記されているところも面白い。

えっと、ロリ系ブログなのでバンカラ需要はないと思われますが(笑)、私の趣味なのでもう少し続けます。でも旧制高校において展開されていた学生文化は、ある意味少女文化・乙女文化とウラオモテの関係で決して無縁ではないと私は思うのです。ある種の過剰さやロマンチズムはベクトルが違えども、両者に共通している。私が少女文化も旧制高校文化も両方等しく愛しているのは、その精神にある歪みや過剰さを愛しているからなのです。両者の本質は、実はとても似ていると思います。

旧制高校文化を知るために最も手頃な入門書は、上でも言及した北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』(新潮文庫)でしょう。以下、今回の写真と関係のある部分の引用です。

「ところが私は、読書するよりも、もっとくだらぬ外形にまず時間を割いてしまった。帽子に、夢にまで見た白線(旧制高校生は白線帽が特徴であった)を巻き、それに醤油と油をつけて古めかしく見せようと努力した。次に、一人の友人から当時には貴重なものであった地下足袋とひき換えに、でっかい朴歯の下駄を獲得した。それには普通の鼻緒がついていたが、私はどえらい苦心ののち、直径四センチもある鼻緒を自ら作りだし、これを朴歯にとっつけた。旧制高校生の弊衣破帽というのはむろん彼らなりの裏返されたおしゃれで、いつの世にもわざと異様な格好をし、一般の世人とは区別されたがる人種がいるのと同様である。私はそのとてつもない太い鼻緒に、更に墨くろぐろと、「憂行」と大書した。」(p20)

北杜夫、そして同じく作家の辻邦生が青春を過ごしたのは旧制松本高校です(『どくとるマンボウ青春記』の中にも辻邦生は出てきます)。10代の頃は、ひたすら辻邦生にかぶれていた私です。今でも敬愛の念は変わらないけど、すっかり俗物になってしまった今の私には少し眩しい存在かな。それでも、やはりとても好きな作家です。久しぶりに『夏の砦』を読み返してみようかしら。旧制松本高校にも近々出かけたいと思っています。
by yuriha_ephemera | 2007-05-03 19:16 | 雑記
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