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札幌避暑記*3 人形屋佐吉
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人形屋佐吉の話しをいたしましょう。南一条西六丁目にあるこのお店は、幼い頃からいつも眺め、通り過ぎていた場所でした。なぜなら、祖母の家がこの場所から一分という立地にあるからなのです。家族と一緒に、もしくは一人で、大通駅から歩いていると、必ずこのお店の前を通ります。高いビルばかりが並ぶこの区画の中、立ち退くことを頑に拒むかのように存在し続けるこの独特なお店は、少女の私には何やら薄気味悪いものとしてして心の中にありました。人形屋という看板が掲げられているものの、ついぞ開いているところを見たことがないお店。看板の仮面が私には怖いもののように思え、怪しい占いのお店ではないかと思っていた時期もありました。

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澁澤のエッセイでハンス・ベルメールの球体関節人形と四谷シモンに出会い、その後は天野可淡にはまりそして恋月姫の写真集を買い集め、さらには山吉由利子や秋山まほこにも関心が伸びるというものすごく典型的かつわかりやすいコースで人形世界に足を踏み入れた私は、「人形屋佐吉」がどういう存在であるのかを次第に理解していきました。オーナーの片岡佐吉氏は北海道生まれで、1978年に札幌で「人形屋佐吉」を開店したとのこと。私の生まれる一年前のことです。だから私は、生まれた時からこのお店を眺めていたはずなのです。1984年に表参道に支店を開かれて現在もありますが、地理的な問題もありこの表参道のお店が「人形屋佐吉」というイメージになっているのでしょう。ハナエモリビル B1のこの店舗には一度だけ行ったことがありますが、私にとって人形屋佐吉はあくまで札幌のこの店舗です。私の中での人形屋佐吉は、あの黒く怪しい看板、そしてビル街の中にぽつんと立つある種異様な風景なしには存在し得ないものなのかもしれません。

いつもシャッターが固く閉ざされているお店は現在は方針が変わり、頻繁に営業がなされています。昔のお店に足を踏み入れたことがないのでわからないのですが、以前より敷居が低くなった分純度が下がったのかなぁと思わないでもなかったり。純粋に人形の空間というよりは、さまざまな雑貨やアクセサリーの目立つ空間になっているように感じました。それでもやはり、人形の存在するこの琥珀色の小宇宙に身を委ねていると幸せな気分になれます。今回は美しいお顔をしたアンティークのビスクドールのポストカードを数枚、そして恋月姫人形の写真を一枚購入しました。
by yuriha_ephemera | 2007-07-27 00:14 | 雑記
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