今日は文字ばかりのエントリーです。すみません。
16日は上京されたTさんと一緒にお出かけ。お会いできる時間は短かったけれど、天野可淡展そしてJane、さらには表参道の人形屋佐吉と非常に濃密でした。まずはマリアの心臓で開催中の天野可淡展。実はマリアには今まで出かけたことがなくて、今回が初めてでした。自分でもこれにはちょっと驚き。いつになっても好きになれない渋谷のあの雑踏からふっと足を踏み外すように入ったマリアの心臓は予想より小さな空間で、そこにはあの天野可淡の人形が手を触れられそうなくらい近い距離に無造作に展示されていたのにまず驚きました。今まで何度か可淡の人形を見たことがあるけれど、こんな息がかかるような至近距離で見たのは初めてでした。可淡人形はどれも心惹かれるけれど、今回の展示作品の中ではとりわけ心惹かれる少女人形が二体いました。キャミとドロワーズ姿の碧眼(といっても鮮やかなブルーではなく可淡独特のトーンを帯びたあの何とも言えぬ色合い)の子、もう一人は黒ストッキングを履いた上品なエロティシズムをたたえた子。色気があるけれど、顔にかわいらしさがあってそこが非常に好みでした。良いと思った人形はTさんと一緒で、やっぱり好みが似ているわと思う。初めて可淡の人形を見たのはマリアクローチェで、あの時の会場の圧倒的な雰囲気には劣るものの、こうしてまた改めて可淡を見ることができたのは至福でした。天野可淡の人形は本当にすごいのです。みなさんもぜひぜひマリアの心臓に出かけてみて下さい。今はただ、それしか言うことができません。 マリアを出た後はラフォーレのJaneへ。BPNのワンピを素敵に着こなしているTさんは、やはり黒がとてもお似合いになります。私も黒は好きだけれど、実はブラウン系(茶や生成)の方が似合って黒もブラウンと組み合わせた方がなじみます。だからゴスが着こなせなくて、それが残念。それに対して黒い装いがとびきり似合うTさんはJaneの黒いスカートと白いブラウスをお買い上げされていました。細工が凝っていつつもストイックな雰囲気の漂う組み合わせで、さすがはTさんセレクト。お互い自分には似合わないものを着こなしている相手を羨ましく思っている、でも自分の色を自覚しているゆえ相手を眺めることによってその欲望を昇華しているという構造までそっくりですよね(笑)。買物をしないと思っていた私も、店頭に並んだダークファンタジアシリーズのアクセにやられてしまいドングリとキノコのチャームがついたリングを取り置き。ゴールドのリングに生成のチャームの配色がとても好みでした。買物しない宣言をしたばかりだけど、指輪一つくらいなら、ね。次の用事があるので慌ただしくJaneを出て地下のライカでプラの『忘却モノローグ』を買おうと思うも入荷はなしと。えーん、そんな。帰りにタワレコに寄るしかないと覚悟を決める。 移動距離が一駅ながら暑さに負けて地下鉄で表参道へ。ハナエモリビルの地下にある人形屋佐吉にて、店主の片岡佐吉さんと初めてお会いしました。名刺交換をして、初対面ながらいろいろなお話を聞くことができたのは非常に光栄でした。祖母の家が札幌本店のすぐ近くにあること、だから人形屋佐吉は私の原風景の中にあることをいつかお伝えしたいと思っていたので、こうして実際にお目にかかることができて、長年の宿題をようやく片付けた気持ちになりました。でもここで、別の大きな宿題を(勝手に)持ち帰りましたけれど。その話しはまた後で。 佐吉さんのお話の中で、非常に印象に残ったことが二つあります。一つめは人形の顔の話し。私がもともと人形ではなくオートマタやカラクリ人形が好きだったという話しになった時に、江戸時代など昔のカラクリ人形の「顔」をしっかり見ておくように、あれは今はもう作れない顔だとおっしゃったこと。これだけだと私はまだピンとこなかったけれど、夏目漱石や森鴎外をはじめ明治期の人たちの写真を見ると「顔」が違う、今の人間の顔とは根本的に風格や品性が違うという具体例を出されてようやく話しのエッセンスがわかりました。私はずっとメカニズム重視でカラクリを見ていたので、実のところ人形の顔にはほとんど注目を払っていませんでした。私にとって、人形の心臓であるからくり、あの内部の不可思議な小宇宙とテクノロジーこそが惹かれるモノであったから。だから昔の私は、動かない人形になんてまるで興味がなかった。そんな私の認識を変えたのが可淡だったのです。今ならもっと違ったカラクリ人形の見方ができるに違いない。これからはきちんと顔にも注目することにします。 二つめのお話は、天野可淡の人形について。誰もが皆、可淡の人形を見て衝撃を受ける。でもその衝撃は一体何なのか?それを問われて、とっさに答えることができませんでした。そして佐吉さんご自身もまだわからないとおっしゃっていたのです。可淡の人形は見ればすぐにわかるけれど、ビスクではないので肌がきれいなわけでもない、細部まで丁寧に作り込まれているわけでもない、そもそも「美しい人形」なわけでもない、それなのに一体なぜ見る者にあれほどの衝撃を与え惹き付けてやまないのか。少し時間が経って考える猶予があった今でもやはり全然わかりません。でもこの衝撃を少しでも言語化できるよう、もう少し自覚的に考えてみてもよいのではないか。天野可淡という謎に対する自分なりの考えを言語化すること、それが私の受け取った大きな宿題です。 今まで語ったことがあるかどうかわからないけれど、私と天野可淡との出会いの話しをいたしましょう。私は可淡人形を「見る」前に「知り」ました。本読み人であった私は昔は今の数十倍は本を読む人で月に百冊くらいはざらに読んでいたわけですが(今でも研究のための資料を入れればそのくらいは軽くいきますが、それは私にとって「読書」じゃないのでカウントをせず今では情けないくらいの数しか本を読んでいません)、その乱読時期に敬愛し読みふけっていた一人が高山宏さん。どの本か失念してしまいましたが、読んでいたある高山本の中に天野可淡追悼のエッセイが収録されていました。可淡という何やら印象的な名前を持つその人は、すごい人形を作りそして若くしてバイクの事故で亡くなったということをその中で初めて知りました。だから私にとって、人形そのものよりもまず先にテクストで可淡を知ったのです。実際に初めて可淡人形を見ることができたのは、2002年にマリアクローチェで開催された天野可淡展でした。非常に遅い出会いといえるでしょう。あれはもう、私にとっては尋常ではないほどの衝撃でした。マリアクローチェという空間を含め、こんな世界があるのかと遅まきながらに打ちのめされる気分だったのです。佐吉さんとお話することによって、高山宏によって導かれた天野可淡との出会いという自分のルーツを久しぶりに思い出しました。この話しは、余力があれば先日出かけたムットーニ展の時の内容とからめてもう少し語るかもしれません。ムットーニについても近々書かねば。 こんな話しをしているうちに時間はあっという間に過ぎ、Tさんの次の予定があるので慌ただしく原宿駅に向かいました。佐吉さんは独特のオーラのあるパワフルな方で、ぜひまたお目にかかりたいと思いました。こうした出会いを作って下さったTさんには本当に感謝です。そうそう、佐吉さんからは今までマリアの心臓で開催された展覧会のフライヤーを一揃いお土産としていただきました。可淡はもちろん、恋月姫や丸尾末広そして山本タカトなどが彩る美麗なフライヤーを眺めているだけでうっとりです。 原宿駅でTさんと別れてからは渋谷のタワレコへ。ここでようやくPlastic Treeの10周年記念ドキュメント『忘却モノローグ』を購入しました。テクストを読みDVDを見た今いろいろと想うことはあるけれど、それはプラブログの方に書きたいと思います。最近あっちを全然更新していないから、たまには中身のあることを書かないと。Plastic Treeは私にとって完璧な存在では決してない、でも苛立つ部分や残念に思う部分を差し引いても私は彼らから素晴らしいものをたくさんたくさん与えてもらって、やはりとても愛しい存在なのです。だから私がもらった素晴らしいものに対するほんのささやかなお礼として、私は日記の中でプラのことを書き続けるのです。Plastic Treeはいいバンドですよ、いい音楽を作っていますよ、と。 「初めっから想いってさ 伝わらないように出来てるの 知ってたよ 消えちゃっても別にいいの それは嘘 なんだかなぁ 苦しそうにキミは笑うよ」 「明日を呪って 明日を夢見て どこかしら似てるような僕らに祝福を、ゼロ――――。」 Plastic Tree「ゼロ」 それにしても今日の日記は長いですね。そして文章をダラダラ書いたブログは読みにくい。そろそろサイトの日記を復活させるべきなのでしょうね。しかしブログに慣れてしまうと、日記を書くためにHTMLを弄るのがめんどくさく感じられます…。
by yuriha_ephemera
| 2007-09-17 10:37
| 本・映画・アート
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