クシー君よ永遠に
c0077407_19372015.jpg
c0077407_19373117.jpg
c0077407_19374228.jpg
c0077407_19375296.jpg


かなり重めな日記です。昨日友人の日記で漫画家・イラストレーターの鴨沢祐仁さんが亡くなったことを知り、大変なショックを受けています。鴨沢さんの名前がわからなくても、「クシー君」の名前でピンとくる方もいるのではないでしょうか。「クシー君の夜の散歩」をはじめ、クシー君とウサギのレプス君は私にとって「少年的」なるものの一つの理想的な具現でありました。作品全体を貫く世界観をはじめ、コマに丁寧に描き込まれた一つ一つのモノすべてが愛おしくて、本を開くたびにキラキラと広がるクシー君の夜の世界は私にとって憬れでありました。少女の空想が作り出した少年世界も大好きですが、純粋少年によって生み出された、痛いまでに透明でプラスチックのような世界は少年的なものを愛する者にとって非常に希有な存在でありました。

鴨沢さんが亡くなったと知って慌ててmixiのコミュを覗きに行って、死を巡る状況がだんだんとわかってくるにつれて、悲しさが余計に募ってきました。私の場合、作品と作者への関心は別物として存在しています。だから、作品が好きだからこそ作者に対して関心が行く場合と、作品は作品として閉じたものとして鑑賞し、作者に対して関心が向かない場合の両方のパターンがあります。作者に関心がいかないからといって愛情が低いわけではなく、ただ作品そのものを鑑賞したり愛でたりする過程に作者本人のパーソナリティ云々はあまり関係ないというか…。上手くいえないのですけど、つまり作者についてほとんど知らなくてもその作品や世界を愛しているということは多々あるということです。そういうわけで鴨沢さんのオフィシャルサイトがあることはうっすらとながらは知っていましたが、アクセスをしたことはほとんどなく、だから鴨沢さんが鬱を患っていたことも、最近の状況も全く知りませんでした。今更ながら日記を読み、なんともいたたまれないような、つらい気持ちになっています。

以前散歩会の時にshigeyukiさんが(散歩会については後日改めて日記で記します)「稲垣足穂はセレクトショップ、もしくはエッセンス的な存在ではないか」というようなことおっしゃっていましたが、私もまさに然りと思っています。私自身大変足穂の影響を受けている人間ですが、実は足穂の作品直接の影響よりは、足穂に影響を受けた人たちの創作の方からよりインスピレーションを受けているような気がします。つまりは誰かの解釈を経た足穂のエッセンス、足穂的なものから広がるイマジネーションを受け取っているのではないか。そういう意味では長野まゆみさんやあがた森魚さん、そして言うまでもなく鴨沢祐仁さんが私に足穂のエッセンスを教えてくれた方々でした。

私の手元には鴨沢さんの作品集ばかりではなく、寮美千子さんの『星兎』(パロル舎)という本があります。この本の装画そして本文に挿入されているイラストを担当されているのが鴨沢さんであり、寮さんそして鴨沢さん両者ともに好きな私にとっては非常に嬉しいコラボレーションでした。この本はファンタジックな可愛らしさがありつつも切なく胸を抉るストーリーなのですが、鴨沢さんの件も相俟って表紙を見るたびに余計切なさが募る一冊となりそうです。

以上はすべての著作を網羅しているわけでもない、数冊の本を手元にひっそりと置いている程度のファンの戯言です。地球の重力から解き放たれた鴨沢さんは、今頃遠い銀河の彼方からハーフムーンを眺めつつペパーミントのカクテルを飲んでおられるのかもしれません。ご冥福をお祈りします。

写真はこの内容とは全く関係ない、札幌の十一月の写真です。少年ではない、そして少女ですらない私は、少年的なるものへの限りない憧憬を胸に抱きつつ、今日も図太くたくましくこの現実世界を渡り歩いていくのです。
[PR]
by yuriha_ephemera | 2008-01-21 20:25 | 雑記 | Comments(10)
Commented by 玉青 at 2008-01-21 21:38 x
嗚呼またも星が流れましたか…
どうりで深々と冷え込むはずです。

私もこの場を借りてご冥福をお祈りします。
Commented by shigeyuki at 2008-01-21 22:31 x
由里葉さんの記事に驚き、鴨沢さんのブログを捜して見たりしました。
そして、やっぱり何とも寂しくなりました。
今はもう一冊も彼の本は持っていませんが、時々ふと思い出すことがありましたし、この前皆さんと会ったときも、ちょっと名前が出ましたね。
神戸にいた頃、山手のバーで生まれて初めてカクテルを注文した時、気取ってドライマティーニを注文したのは、クシー君の漫画で読んだからだというのは、ずっと内緒でしたが、ここで告白します。

ご冥福をお祈りいたします。
Commented by yuriha_ephemera at 2008-01-22 13:19
玉青さん>
また一つ、星が消えてしまいました。
深い喪失感に苛まされていますが、今更ファンに出来るのは作品を愛し続けることぐらいなのでしょう。
冬の透き通った夜空を見ると鴨沢さんのことを想う毎日です。
Commented by yuriha_ephemera at 2008-01-22 13:23
shigeyukiさん>
ネットに日記が残っているというのがなんとも生々しいですよね…。いろいろと思うところがあるのですが、今はただもうご冥福を祈ることしかできません。本当に今更なのですけど、これから手に入れていない鴨沢さんの本を少しずつ集めていこうと思っています。
Commented at 2008-01-22 16:36 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yuriha_ephemera at 2008-01-22 17:36
中山さま>
はじめまして。鴨沢さんの件は本当にショックですよね。先ほど中山様宛にメールをお送りしましたので、どうぞ御覧下さいませ。mixiの件では申し訳ありませんが、今後も情報共有ができればと思っております。どうぞ宜しくお願いいたします。
Commented by れいこ at 2008-01-22 19:50 x
クシー君は、MOEかどこかで見た、ポップでファンタジックな少年、という印象だったのですが、先日のお散歩会で、足穂の影響を受けている、というお話を伺い、図書館で著書を見つけ、その軽やかで遊星的、星のスパァクする夜の雰囲気に、心地よく浸っていた矢先の訃報でした。
ただただご冥福をお祈りします。
Commented by 中山 at 2008-01-23 02:38 x
由里葉様
メールをありがとうございました。
由里葉さんのHP、少しづつ拝見させていただいております。
由里葉さんの世界は奥が深く、果てない広がりがあって惹き込まれます。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
Commented by yuriha_ephemera at 2008-01-23 22:12
れいこさん>
鴨沢さんの絵には心地よいポップさがあって、そこがとても好きでした。主線のくっきりしたあの絵柄が生み出すポップな雰囲気は、すべてをセピアにぼやけさせてしまう自分にはない要素だったので本当に憬れたものです。興味を持った矢先の訃報は残念ですよね…。なんだかいろいろと痛ましくて、私はいまだに気持ちの整理がつきません。
Commented by yuriha_ephemera at 2008-01-23 22:15
中山さま>
御丁寧にコメントをありがとうございます。細々と、しかしそれなりに長く作り続けてきたサイトは、鴨沢さんをはじめ私が好きな方々の世界から切り出したエレメンツで作り上げたコラージュのような気がしています。悲しい形でのご縁ではありましたが、今後もサイトに遊びに来ていただけるとうれしいです。またのちほどメールをお送りいたします。
<< セールは楽し GOTH展。。。。。。。。 >>
AX